言語化力を奪う”クリシェ”にご注意

言語化


感動した体験を人に話す時、

「あぁ、この感動をなんとか伝えたいのに、語彙力がなくて全然伝わらない…」


と、もどかしい思いをしたことはないでしょうか?


自分の気持ちは昂っているのに、

的確に状況や心情を表す言葉が出てこなくて場がいまいち盛り上がらず、

気まずくなったことはありませんか?


せっかくの感動を、人と共有できなければ楽しさ半減です。


ライブの感動を語り合い、漫画の面白さを語り合い、旅行で起きたサプライズを語り合える豊かさが欲しいですよね。


今回は、

  • 語彙力が乏しいことでどんな弊害があるか
  • 語彙力を鍛えるには何をすれば良いか

をお伝えします。


語彙力が向上することで、世界の見え方がより繊細に、豊かになります。

「なんとなく日々がつまらないな。人間関係もつまらないな」


と思っている人、とりあえずこのブログを読んでみてください。


語彙力を鍛えて、今まで気づかなかった小さな発見を人と共有したくなるはずです…!

友達との気まずい沈黙が夢中のおしゃべりに変わり、

人間関係もより面白く、豊かになっていくことでしょう。


小中学生で書いていた日記のNGワード


小中学生の頃、宿題で書いていた日記で使ってはいけないNGワードがありました。

それは「すごかった」です。


「すごかった」を書きそうになったら一旦手を止めて、何がどのように”すごかった”のかを考え、別の言葉で表現するようにしていました。


なぜか?


すごかった」は何の情報も入っていないスカスカ言葉だからです。


「すごく」は「すごく楽しかった」「すごく悲しかった」のように、形容詞を強調するのが本来の使われ方です。

しかし、単に「すごかった」では、どのような感情だったのかが分かりません。


こういったスカスカ言葉を多用すると、言語化力が貧相になります。

そうすると、伝えたいことが伝わらない、そして知覚する世界や自己認識も乏しくつまらないものになっていきます。


そういったスカスカ言葉を乱用するとどんな危険性があるのでしょうか?

そして、言葉を豊かにしていくには何をすれば良いのでしょうか?


クリシェとは何か?


クリシェとは

乱用の結果、意図された力、目新しさが失われた語句、表現

を指すフランス語です。

日本語だと”常套句”、”ありきたりな言葉”が相当します。


万能な言葉として使われすぎてしまったために、意味が限りなく薄くなってしまった言葉です。


やばい すごい エモい 草 神 …

このような言葉ばかりで会話を完結させていないでしょうか?


例えば「やばい」は元々「身に危険が迫る」という意味で使われていたそうですが、

ポジティブな意味でも使われるようになり、

今ではこの世に存在するすべての形容詞を「やばい」で代替できてしまいます。


また、「エモい」は

「心が揺さぶられて、何とも言えない気持ちになること」

という一応の意味があるそうですが、

無数にある感情を表す言葉がすべて「エモい」で片付けられてしまいます。


画像

参考:「好き」を言語化する技術

クリシェを乱用すると、次のような弊害があります。


クリシェの弊害①:伝えたいことが伝わらない


「ライブ行ってきた。マジでやばい。神」

SNSを開けば、今や”神”は八百万(やおよろず)以上に量産されています。


感情の昂りを表す言葉をこのような擦られまくった表現に頼っていると、

その言葉が陳腐化し、言葉が持つ本来のパワーがどんどん失われていきます。


せっかく感動したことを共有したくても、言葉のレパートリーを持っておらず、

またうまく言葉を使いこなすことができなければ、

話が広がらず、深まらず、ただありきたりなことしか言えなくてもどかしくなるばかりです。


僕自身も、心が揺さぶられた体験をSNSに投稿しようとしても「感動した」しか言葉が出てこなくて、

「こんな単純な言葉では言い表せないほど心が動いているのに、それを形容する言葉が出てこない…」


と嘆くことがよくあります。

結果、絵文字に感情表現を託すこともしばしば😢


クリシェの弊害②:知覚する世界がつまらなくなる


子どもの頃、計り知れないほどの想像力で世界がキラキラと、

時にはファンタジーに見えていませんでしたか?


しかし悲しいことに、想像力は大人になって現実を知るたびに薄れてしまいます。


そんな大人でも、自己認識や知覚する世界を解像度高くキラキラとさせるには、

豊かな語彙力(知識)を持つことが重要です。


例えば雲の名前を知らなければ、

空に浮かぶ白いものを「雲」としか捉えることができないですが、

「鱗雲」「しらす雲」「うね雲」の言葉(知識)を知っていれば、

空を見上げて季節の移り変わりを感じたり、雲の美しさに想いを馳せることができます。


感情表現の語彙力でも同じことが言えます。

「怒り」を表す言葉として「ブチギレる」しか使っていなかったら、

怒りのバロメータが高くても低くても「ブチギレた」としか知覚できません。


  • 「違和感がある」
  • 「疑問を抱く」
  • 「胸がザワザワする」
  • 「イライラする」
  • 「腹がたつ」
  • 「ブチギレる」


等のレパートリーを持っていれば、

怒りがどの程度なのかを自己認識することができます。


便利で万能な言葉を使いすぎると、世界がありきたりなものに見えてしまい、

自分の感情も薄っぺらく、面白みのないものになってしまいます。


豊かな言葉を使えるようになるヒント


豊かな言葉を使えるようにするためにできることをまとめました。


①知っている語彙を増やす

  • 「うかつ」
  • 「無鉄砲」
  • 「うがった」
  • 「たしなめる」
  • 「コミット」


これらの意味、説明できますか?

おそらく聞いたことはあるけど、いざ意味を問われると意外とわからないですよね。


こういった言葉に出会ったときに、スルーせず調べるんです。

気づいていないだけで、実は日常生活でわからない言葉って意外とたくさんあるんです。

脳内アンテナを張って、言葉探検をしてみてください。

日常や体験を通してどんどん語彙が豊かになっていくの、とっても楽しいですよ…!


②使える語彙を増やす

知っている語彙=使える語彙ではありません。

会話や日記などでアウトプットすることで、知っているだけの語彙が使える語彙になります。

「やばい」「エモい」を使いたくなったら一旦踏みとどまって、より深層にある感情を観察して言葉にしてみましょう。

よりあなたの心を精度良く描写する言葉を探してみましょう。


おすすめはスマホの類語辞典です。

使ってみると、新しい語彙の扉が開けますよ!


③具体化力を磨く

言ってることがぼんやりしている人の話、面白くないですよね。

情報の密度を高めて、解像度を高めていきましょう。


例えば楽しいという感情に対し

「なぜ楽しかった?」
「特にどんなところが楽しかった?」

と深掘りすることで、「楽しい」の解像度を上げることができます。


おすすめは「なぜ→例えば」です。

この2つを意識するだけで一気に話が深く、広くなります!


④伝え方を工夫する

文章の読み手、会話の聞き手が引き込まれるような工夫の仕方をしてみましょう。

例えば「まるで〜のようだった」という比喩(たとえ話)を使えば、より臨場感のある感情を人に伝えることができます。


実は、このブログにも比喩(直喩・暗喩)が何箇所か使われています。

・SNSを開けば、今や"神"は八百万(やおよろず)以上に量産されています。
・脳内アンテナを張って、言葉探検をしてみてください。
・クリシェはインスタント食品のようなものです。


日記を書くときに比喩を使うチャレンジをしてみると、普段の会話でも自然と良い例え話ができるようになりますよ!


画像


この4ステップを習慣にできる方法があります。

それが「ジャーナリング」です。


ジャーナリングとは、思ったことをそのまま紙に書き出していくことです。

自分だけのノートを用意して、毎日5分ずつでも書いてみてください。

書く習慣を続けることで上記4ステップが繰り返し行われ、語彙力が磨かれていきます。


参考:「うまく言葉にできない」がなくなる言語化大全


言語化能力を磨いて、世界をより鮮やかに


クリシェはインスタント食品のようなものです。

すぐに使えて、それっぽく感情を表せて便利。


ただ万能であるが故に、伝えたいニュアンスが繊細に伝わらないという危うさも持ち合わせています。


言語化能力が上がれば、感じられる世界がより繊細に、美しくなっていきます。

そしてそれを言葉によって大切な人と分かち合えます。


言葉の絵の具を増やし、

より色彩あふれる世界を描いて、

人と共有する楽しさを味わっていきましょう。



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